31年ぶりに改訂される看護師確保法改定案を読む 6
55年たっても実現されていないニッパチの8
「夜勤の負担が大きい」は、連載の2回目で紹介した看護師の退職理由でも全体の第10位に入っていました。
しかし退職理由1位「結婚」、2位「子育て」、4位「妊娠・出産」などの背景には「勤務時間が長い・超過勤務が多い」と共に「夜勤の負担が大きい」があります。
長時間勤務や夜勤負担があるから、働くことと結婚、子育て、妊娠・出産が両立しないということになるのです。
まず夜勤の実態として「最も多くの看護職員に適用されている夜勤形態」が16時間二交代であることが示されています。
そして「病棟に勤務する看護職員の34.3%が、1か月の夜勤時間数が72時間以上になっているなど、夜勤負担が重い看護職が存在」と指摘しています。
夜勤は2人以上で月8回以内(3交代で)を要求したニッパチ闘争から55年たっていますが、いまだ月8回以内は実現されていないのです。
8時間で8回だと夜勤時間は64時間です。
改訂案では08年に出された「月平均夜勤72時間要件」を基準に72時間以上が重い夜勤負担と言っていますが、勝手に8時間も増やさないでほしいものです。
資料では、72時間以上が34.3%なのですが、これを64時間以上で線を引くと62.2%になります。
つまり病棟で勤務している過半数の看護師が月64時間以上の重い夜勤負担を強いられているのです。
55年間、医学の進歩や高齢化により夜勤の労働密度は上がり過酷さは増しています。
55年前に8回が夜勤の上限だったとしたら、現在は6回や4回に(2交代なら3回や2回)夜勤回数が制限されるべきです。
解決策は72時間要件を64時間要件にすることです。
62.2%が34.3%になったように72時間要件は効果を発揮しています。
要件を64時間と厳しくすれば必ず効果があるはずです。
また16時間2交代夜勤が主流になっていることも問題です。
実は16時間2交代夜勤は日本でしかない働き方です。海外では16時間夜勤を行うのは、同僚が勤できなくなった時など緊急事態だけです。
私たちが都庁職病院支部時代に行った「16時間夜勤疲労度調査」では、勤務時間に対して仮眠時間が短すぎ仮眠の疲労回復効果が発揮されていないこと、そのため勤務終了時には自らの間違いに気が付かない可能性があるほど注意力が低下していることを科学的に明らかにして、日本看護協会学術集会で発表しました。
夜勤は、正循環の3交代を基本にするべきです。
そのためには、週労働時間を40時間ではなく32時間に制限する必要があります。
夜勤問題を解決するためにも増員が必要なのです。
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