31年ぶりに改訂される看護師確保法改定案を読む 5
改定案はパワハラにどう取り組むつもりなのか
パワハラが病院で働く看護師にとって深刻な問題であるということです。
深刻な病院現場におけるパワハラ。
改定案では現状をどのように評価し、どのような解決策をもって臨もうとしているのでしょうか?
そう思ってページをめくると、全くの期待外れです。わずかに1ページ。
その内容も労働施策総合推進法において、事業主にはパワハラ防止措置の実施が義務付けられていることを紹介するだけです。
病院現場でのパワハラの特徴などは全くつかもうともしていませんし、当然解決策など書かれてもいません。
紙の無駄とまでは言いませんが、これじゃ何の役にも立たないなというのが感想です。
病院、とりわけ看護現場でのパワハラの背景には人員不足があります。
病棟の場合は7:1などの基準を死守しなければなりません。
7:1をとれないと病院は多額の減収になってしまいます。
そこで人員はまず一般病棟が最優先に配置されます。突然欠員になった時には、7:1配置基準から除外されているICUや外来から人が剝がされることになります。
そうするとICUや外来では無理な勤務を強制されることになります。道理のない無理な勤務を強制するからパワハラが発生するのです。
この時、見過ごしてならないのは、パワハラを生むような職場環境は、患者の安全も守れないということです。
例えば、外来もそれぞれ専門性があり、誰もがどこでも働けるものではありません。
しかし人員が不足しているので、誰もがどこでも働けるようにしようと管理職が言い出します。誰もがどこでも働けるようにするには、当然ですが研修の時間が必要になります。
ところが、人員不足ですから十分な研修時間は確保できません。
このまま強行しようとすれば、不充分な練度で新たな業務をこなすことになります。
これでは患者さんの安全を守ることができませんから、現場は反発します。その反発をねじ伏せるためにパワハラが引き起こされるのです。
つまり、病院の看護の現場でパワハラを防止するには、一般的なパワハラ防止措置に加えて欠員を出さないことが非常に重要なのです。
パワハラは、退職者を生み出しさらに欠員を悪化させ、さらなるパワハラを生み出すことになります。(つづく)
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